北京~モスクワ 第3/4国際列車

第3/4国際列車-RW19雑記

 このページでは、いくつかのテーマで第3/4列車の興味深い光景を不定期に紹介していきます。
 第二回はヨーロッパとアジアを分ける「ウラル山脈のオベリスク」です。

第二回「ウラル山脈のオベリスク」

ウラル山脈

ウラル山脈(ウラル大森林?)
ウラル山脈(ウラル大森林?)

 広大なユーラシア大陸に於いて、地政学にヨーロッパとアジアの分かれる所は「ウラル山脈」と「ボスポラス海峡」と定義されているようです。ウラル山脈はモスクワの東、概ね1600kmほどのところにある長い山脈。シベリアを象徴するように森林の生い茂る山地です。いわゆる「シベリア」と呼ばれる地域はこのウラル山脈より東側を指します。ボスポラス海峡は黒海の首根っこにあたる所にある海峡で、この海峡を抜け、マルマラ海、ダーダネルス海峡を通過するとエーゲ海につながります。このボスポラス海峡のヨーロッパ側にそびえる街がイスタンブールです。
 ウラル「山脈」とは言うものの、日本人の感覚からいうと単なる「山の中」です。我々にとっての「山脈」とは「アルプス山脈」「ヒマラヤ山脈」といった切り立った山の連なりです。日本語には「山地」という言葉もありますが、例えば「中国山地」や「四国山地」は奥深い山が連なり、イメージ的には「山、山、山」。ウラル山脈は全くそのようなことはありません。「山の中」という言葉も怪しい。シベリアで嫌と言うほど見せ付けられる森林がそのまま続いているような感じです。

ロシアはヨーロッパか?

 ロシアという国は一般的に「ヨーロッパ」に属すると思われています。国自体は日本海まで続いており、欧州側よりもアジア側に属する地域の方が大きいにも関わらずです。アジアの日本人にとって、ロシアを「アジアの国」と捉える人はまずいないでしょう。「欧州最東端の街 ウラジオストク」と書かれた本も見たことがあります。しかし、西洋に住む人々、例えばフランス、ドイツ、イタリア人は、ロシア人を「ヨーロッパ」と捉えていない節があります。彼らに話を聞いてみると、ヨーロッパと言えば東はフィンランド、ポーランド、オーストリア、セルビア、ブルガリアまでで、「ロシア」は「ロシア」という独立した地域と考えている。つまりはアジア人からは「ヨーロッパ」と見られ、ヨーロッパ人からは「非ヨーロッパ」と思われている、観念的には極めてあいまいな国なのです。地政学的には何処かで境目を設けなくてはいけないので丁度都合よくウラル山脈があるのでそこを境目としているように思えます。民族学的には過去にさかのぼってもスラヴ人の東端がウラル山脈という訳ではないようなので、この面からも欧亜の境を厳密にウラル山脈にもってくるは苦しいでしょう。

※ハンガリーは民族的に大元を辿るとアジア人をルーツとするマジャール人が多数を占めますが、20世紀初めまで長くオーストリア=ハプスブルグの支配下にあったので、その感覚的な地域分けは微妙なようです。ロシア同様「ハンガリー」は「ハンガリー」か。「トルコ」がEUに加盟できない理由の一つは民族が起因していることもあります。ヨーロッパ人はこの辺りのこだわりが激しいです。

オベリスク

ウラル山脈のオベリスク
ウラル山脈のオベリスク

 ヨーロッパとアジアの境界線を示すオベリスクが、第3/4列車の沿線上、スヴェルドロフスク~ペルミⅡのウラル山脈横断区間にあります。このオベリスクを見ることは、第3/4列車に限らずシベリアを東西に駆ける車窓風景として一大イベントです。鉄道紀行作家である宮脇俊三氏も、このオベリスクを見る事に対する興奮を著書「シベリア鉄道9400km」に書かれています。このオベリスクは、第3列車でしたらスヴェルドロフスクを出発して1時間ほどの場所にあるモスクワ起点1,777kmキロポスト付近の線路の南側に立っており、上に「←Asia」、下に「Europe→」とキリル文字で書かれていて、ここが欧亜の境界である事を示しています。
 ロシアの鉄道は基本的に右側通行なので、線路の南側にあるオベリスクを確実に見るのならモスクワ発の列車に乗るほうがよいです。何故なら、この路線は非常に貨物列車の量が多く5、6分に一本、しかも50両編成とか60両編成などという極めて長大な編成走っている為、対抗線路を塞がれる可能性があり、結果見られない確率が結構高いのです。東行きなら邪魔される事はありません。しかし、モスクワ発の「ロシア号」や第4列車は、夜この区間を通る為に見ることができず、確実に見たければ慎重に列車を選ぶ必要があります。
 ウラル山脈の位置づけがどうであれ、このオベリスクを見た時は、ようやくヨーロッパへたどり着いたか、と思わせてくれるのも事実です。北京よりここまで6,000km近く程突っ走って来た事には変わりませんし、その感慨も十二分に味わう事が出来るでしょう。

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