北京~モスクワ 第3/4国際列車

第3/4国際列車-第3/4国際列車の車両

 第3/4列車の所属は中国鉄道部 北京鉄路局です。その為、モンゴルやロシアも走りますが、中心となる車両は中国国鉄のものが使われます。しかし食堂車は各国境で付け替え、また国内旅客用にモンゴル、ロシアの車両もそれぞれの国で連結されます。

中国車両の種別説明

中国車両に於ける形式記号の簡単な説明をします。

●RW:軟臥車(Ruan Wo che)

軟臥車RW25T型寝台

 日本で言うA寝台です。日本で一口にA寝台と言っても個室から開放まであるように、中国の軟臥は主に2人用と4人用があります。中国国内列車では4人用が大多数を占めており、一般的に「軟臥」と言えばこの4人用寝台を指します。2人用の軟臥は形式上は「軟臥」と言いますが、一般的には「高包」と言われます。軟臥のワンランク上、「高級軟臥」です。もちろん高包は連結される列車は限られます。モンゴル・ロシア行国際列車や北京・上海と香港を結ぶ列車、北京と上海を結ぶ高速寝台列車など。この車両が付いている列車は、中国鉄道の中でも「花形」と言うことが出来るでしょう。
 車内は1区画扉付きのコンパートメント(区分室)です。2人用か4人用によって車両の定員が異なります。中国の車両間に於ける料金格差は非常に激しく日本の比ではありません。日本のA寝台は金銭的に無理すれば何とか乗車出来る料金設定ですが、中国の軟臥は低所得者にとっては無理しても乗れる料金設定ではなく、乗車しているのは裕福な人達ばかり。これが高包車になると、一般の人達には何の為についているのか判らない車両になります。経済発展により、この車両に乗れる人も増えてきおり、連結両数も一編成に一両が基本なので、現在では最も切符の入手が困難な等級となりました。
 社会主義の理想は昔の話。今の中国の社会は日本以上に資本主義で、その格差社会を存分に見せ付けてくれる車両です。
RW19(高包車) RW18(軟臥車)

●YW:硬臥車(Ying Wo che)

硬臥車YW25G型寝台

 日本で言うB寝台です。6人一区画3段の開放寝台。モンゴル・ロシア行国際列車用では4名1室の扉付きコンパートメントです。
 中国国内列車では、長距離を移動するのに最も使い勝手の良い車両です。料金的にもリーズナブルで、かつてはこの等級から席(寝台)が無くなっていくことが多かったですが、今は事情が違うようです。
 90年代に中国を駆け回っていた時は、列車に乗る=この硬臥に乗る事でした。連結されている車両も多いはずなのですが、席はいつも満席で、チケットはプラチナ化していました。現在は列車の増発と人民の所得間格差が広がったこともあり、また寝台利用層が飛行機や軟臥に移りつつあり、そして何よりも連結両数が増え、長距離を走る特快(特急列車)や快速(急行列車)では硬座よりも編成両数が多いことが大抵なので、昔と比べて相当切符購入が楽になったと思います。少なくともオフシーズンなら、前日までに手配すれば寝台を押さえられる事が多くなりました。
YW18(硬臥車)

●CA:餐車(Can che)

餐車 CA25T型

 食堂車です。日本では絶滅寸前ですが、中国の列車では付いていて当たり前の車両です。さすがに短距離列車や夜発早朝着列車にはありませんが、例えば午前出発夜到着とか、食事時をはさむ長距離列車にはほぼ必ず連結されています。
 食の国中国では、食堂車の料理もその場で一から調理します。電子レンジ調理やレトルト食品などあり得ません。火力必須の中華料理だけあって今でも幅広く石炭コンロが使われますが、最近では電気コンロも出てきたもよう。出てくる料理は市中の一般食堂と比べると高いですが、車内でご飯と一品料理が食べられるのは有難いです。私も夕食をはさむ列車では、高いとわかっていても必ず食堂車を利用します。
 味は、食堂車の所属する鉄道管理局と料理長のやる気で天地の差が出ます。以前、全国から名料理人が集まる中国料理人コンテストの金賞受賞者が、天津-武昌を走る列車の食堂車料理長だったこともありました。逆にハズレの時は言いようのない怒りに打ち震える程の料理を出されることもあり、こればかりは利用してみないと判りません。
CA18(餐車)

●XL:行李車(Xing Li che)

 荷物車です。乗客の手荷物の他に、かつての日本と同じように荷物托運サービスがあり、貨物列車に乗せる程のものでも無い小荷物を乗せています。この托運サービスは、駅で荷物の配送依頼をすると指定した駅まで荷物車で運んでくれ、駅で荷物を受け取れるというもの。日本では宅急便などの宅配サービスが充実することによって荷物車による配送は廃止されましたが、中国ではこの鉄道輸送サービスが隆盛で、各駅に事務所があります。
 特に「中鉄快運」というサービスは、大駅でのやり取りは勿論のこと、主要線区に荷物専用列車を走らせて利便性を向上させています。国際列車では何を積んでいるのかは不明。運び屋の物資や出稼ぎ外国人が故国に持っていく電化製品などでしょうか。
XL18(行李車)

番外編:中国国内を走る代表車種

以上に示したのが第3/4列車に使用される車両種別になりますが、番外編として、中国国内で使用される代表的な車両をご案内致します。

●RZ:軟座車(Ruan Zuo che)

 日本でいうグリーン車です。昼間のみを走る列車に連結されます。向かい合わせ4人のオープンサロン形式の車両。「軟」と言いますが、日本の感覚で言えば大して硬くありません。関西在住の方であれば、「新快速」223系に使用される椅子そのものと思ってもらって良いです(向きは変えられませんが) 。

●YZ:硬座車(Yin Zuo che)

硬座車YZ25G型

 普通車です。中国の列車の真髄にあたる車両であり、最も両数の多い車両。向かい合わせ4人か6人のオープンサロン形式の車内。座席の角度はほぼ100°くらい。つまりほぼ直角の硬い椅子です。最近の車両(特に優等列車)は極多少のクッションが効いて空調もつけられ、相当マシになりましたが、以前は地獄的な車両でした。乗車環境は劣悪、椅子に座っているだけで怒りが湧いてくる車両というのは、世界広しといえども中国の硬座くらいで、特に夜行の硬座に乗るくらいなら多少日をずらしてでも寝台切符を求めたものです。 
 現在でも大多数の中国人民にとって、「列車に乗る」とはこの「硬座に乗る」ことを意味します。彼らにとっては、一晩くらい硬座で旅することなど極当たり前で、乗車前に先立つ苦労など何とも思っていません。日本の一般的な人々であれば、短距離列車はまだしも長距離列車ではこの等級は避けるべきです。

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