北京~モスクワ 第3/4国際列車

第3/4国際列車-RW19雑記

 このページでは、いくつかのテーマで第3/4列車の興味深い光景を不定期に紹介していきます。
 第五回は、高級軟臥(高包)が連結されるもう一つの代表的な列車であるT97次の話です。この列車は、首都北京から香港へ一日おきに向かう特快列車で、第3列車とは異なったタイプの高級軟臥が連結されています。

第五回「もう一つの高級軟臥~T97次 北京西⇒九龍」

T97次 北京西発九龍行

T97次 北京西→九龍 サボ
T97次 北京西→九龍 サボ

 果たして北京と香港を列車で移動しようと考える人はどれだけいるのでしょうか?
北京と香港を結ぶT97次の運行開始は1997年5月のこと。中国への香港返還を目前にして走り始めました。それまでの鉄道での香港行は、羅湖の境界を徒歩で渡って九広鉄路に乗り換えるか、広州~香港を結ぶ列車に乗るかのいずれかでした。
 かつて香港への大陸在住の人々の入境は大変厳しく制限されていましたが、今では北京市民の香港入境は自由化されたので、パスポートとお金さえあれば、容易に香港を訪れることが可能になりました。交通手段としては、25時間かかる列車に乗るくらいなら、少なくとも香港を訪れる大陸人はお金がありますから、飛行機で移動するのが普通のようです。実際春節(2月)、労働節(5月)、国慶節(10月)の時期以外で乗車等級を選ばなければ切符を入手するのは容易です。

異様な北京西駅
異様な北京西駅

 2007年9月、思い立ってT97次に乗車してみることにしました。列車は高包、軟臥、硬臥、食堂車で編成されます。普段中国での1泊程度の鉄道旅行であれば迷わず硬臥を選ぶ私ですが、この時は高包を選びました。正価硬臥662元に対し軟臥1028元、高包1311元であり、通常であれば、切符の選択に全く迷う余地の無い価格設定です。が、この時高包を選んだのは、国際列車(及びそれに準ずる列車)では極力最上等の車両で旅をしたいという身分不相応の欲求と、第3列車の高包と比較をしてみたかったから。

事実上の国際列車

広州東行車両との境界(北京西駅)
広州東行車両との境界(北京西駅)

 香港とは大陸側の九龍地区と島部の香港地区から成ります。よってT97次の目的地は駅のある「九龍」行となります。
 香港は特別行政区であり、同じ中国国内でも大陸の移動にはパスポートコントロールが必要になります。通常このイベントは国境等でされますが、この列車に限っては、北京西駅で出境審査と税関審査が行われます。出国地点を「北京鉄路」と押されたスタンプを得ると一番ホームにそのまま入ります。既にホームには列車が入線済み。この列車、進行方向の先頭から食堂車までが九龍行、食堂車より後ろ数両の硬臥が途中広州東までの運行となります。

出入境聯検庁(北京西駅)
出入境聯検庁(北京西駅)

 よって国内区間のみの利用も可能であり、こちらの乗客は通常通りの改札を抜けてホームに入ることになり、ホーム途中が柵で仕切られていてそれぞれには行き来が出来ません。勿論車内でも完全に別の列車となり、食堂車は九龍行乗客専用、広州東行硬臥の乗客は隔離されます。その代わり途中の鄭州、武昌、長沙、広州東では、香港行乗客はホームに降りられません。九龍行の乗車扱いも武昌のみ。鄭州や長沙では、香港行に乗車出来ないのです。

高級軟臥 RW19K型

高包房間(RW19K型)
高包房間(RW19K型)

 乗車する高包車は食堂車の隣に連結され、一際美しく見えます。モスクワ行の高包が木目調の車内であるように、この列車の車内も木目調でまとめられています。コンパートメントは8室。定員16名。モスクワ/ウランバートル行で使用される高包車が2段ベッド+一人がけソファであるのに対し、当列車は下段寝台2台のコンパートメント。2段ベッド2つで4名一室のコンパートメントを構成する軟臥から単純に上段を取ったスタイルです。また、木目も明るくリネンも薄いピンク色でまとめられているので、非常に明るい印象を受けます。車端にはシャワー室が設けられていますが、現在は利用不可。一部では利用可能との情報もあるのですが、私が乗車した列車では使用出来ませんでした。

出発案内(北京西駅)
出発案内(北京西駅)

 そもそもの当列車利用客の少なさと値段が高いこともあり、この等級は基本的にガラガラで走っているとの情報だったのですが、私が乗車した時は満室。北京駅で前日に購入した切符は16番寝台。つまり最後の一枚でした。軟臥や硬臥はガラガラだったので、移動の為の切符手配はピーク時でなければほとんど問題無いでしょうが、定員の少ない高包車に乗車を希望するのであれば、早めの手配が無難なようです。
 列車乗務員も比較的まともなスタッフが揃っていますので、旅の途中で不愉快になる事もあまり無いと思われます。(但し等級が上であるからと言って乗務員の質が上がる訳ではありませんが。)

乗車のススメ

 この高包車、現在ではT97次の利用車両変更に伴い、下段2台式の寝台から、2段寝台+ソファの車両(RW19T型)へ変更になりました(2008年2月現在)。より新しい車両に入れ替わったことになります。
 T97次は中国の列車の中では青蔵鉄路と並び注目度の高い列車であり、列車自体の切符手配も比較的容易であるので、北京と香港の二大都市を結ぶ列車として、鉄道旅行に興味のある方は是非一度乗車してみることをおすすめします。

●T97次

北京西 12:00発 0km → 鄭州 18:30着/18:33発 689km →武昌 23:36着/23:44発 1,225km→長沙 3:00着/3:06発 1,587km →広州東 10:13着/10:52発 2,302km → 九龍 13:03着 2,475km

  • ※上海→九龍のT99次と隔日運行
  • ※掲載の料金、時刻等は2007年10月現在です。最新の情報を必ずお確かめください。

ページトップへ戻る