北京~モスクワ 第3/4国際列車

第3/4国際列車-RW19雑記

 このページでは、いくつかのテーマで第3/4列車の興味深い光景を不定期に紹介していきます。
 第三回は長距離列車の醍醐味である食堂車の話「餐車賛歌」です。

第三回「餐車賛歌」

食堂車~列車に格をもたらす車両

満席の中国列車食堂
満席の中国列車食堂

 思うに優等列車とは、長大な編成に座席、寝台、優等車両、そして食堂車で編成されて始めて成り立つものです。残念ながら我が国に於ける食堂車は絶滅寸前です。かつて陸の王者として鉄道が幅を利かせていた日本では、ブルートレインを初めとする長距離列車では必ずと言っていいくらい食堂車が連結されておりましたが、採算の問題と移動のスピードアップにより、北海道と本州を結ぶ寝台列車を除いては連結されることはなくなりました。
 人間お腹が空いたらご飯を食べなくてはいけませんが、現在の日本では駅で駅弁を購入するか、車内販売を利用するしかありません。移動手段のスピード化により、食事時でも多少我慢すれば目的地に着いてしまうような旅行が大抵ですから、そもそも列車内で食事をする必要が無い。定期列車で食堂車が連結されているのは上野/大阪~札幌を結ぶ寝台(※1)のみです。これとて気軽に利用できるものではなく、ディナータイムに利用しようと思えば相当額の食事を乗車前に予約する必要があります(※2)。いわば、列車食堂自体が旅を演出するイベント。これでは、移動手段の供食設備として成り立ちません。
 末期の食堂車はレトルトをレンジで温めたようなものが主でしたが、それでも何か特別な車両という存在感がありました、日本の優等列車は、食堂車の営業を止め、編成から外され始めた時から格が崩れ落ちたと言ってもあながち間違いではないでしょう。

※1:大阪~札幌を結ぶ「トワイライトエクスプレス」は臨時列車扱いですが、現実は曜日を決めて運行されているので、「定期列車」といって差し支えないでしょう。
※2:夜9時以降の「パブタイム」では、予約無しで酒のつまみ程度の食事は出来ます。

餐車~中国の食堂車

免費就餐証(無料食事券)
免費就餐証(無料食事券)

 中国の長距離列車は座席、寝台、食堂、荷物の各車両と、列車により空調発電、郵便などの車両で組成され、その量数は最長で20両にもなります。この国では食堂車は当然のように現役。食の国の面目役如と言ったところですが、現実には供食サービスというよりも「決まりだから付いている」といった感があります。ま、理由はどうであれ、中国の列車が魅力的に思えるのは、長編成の列車に優等寝台、一般寝台から食堂車、一般座席まで連結され、およそ「列車の見本」のように一組に組成されて一晩、二晩と突っ走るからです。
 「中国の車両」の項目でも述べましたが、私はこの国の列車内で夕食時を迎える時は、必ず食堂車を利用します。市中の食堂に比べて高いのは間違いなく、味は出たとこ勝負で大抵外れることが多いですが、変化する外の景色を眺めながらの優雅な?食事は、他の乗り物では絶対に味わえません。中国では車販が充実しており、寝台や座席に座ったままでも食堂車で調理された暖かい作りたての弁当にありつけますし、各車両に給湯器があるのでカップ麺を食することもできます。が、椅子に座りテーブルで皿に盛り付けられた一品と一杯のご飯を動く車内で得るという優雅な気分。これを「旅」と呼ばずして何と呼びましょうか?例え給仕が人間を止めた類の最悪の者であったとしても、私は食堂車に足を運ぶでしょう。

Рестран~ロシアの食堂車

絶品のスープ「ラソーリニク」
絶品のスープ「ラソーリニク」

 ロシアも世界に知れた鉄道大国です。長距離列車には当然のように食堂車が付きます。また中国の列車とは異なり、ロシアの場合は同方向に向かう目的地の異なる列車が併結して運行もされますので、その場合は一編成に2両の食堂車が連結されたりします。
 ロシアの場合は中国とは食堂車の位置づけが少々異なるようです。中国は食堂車の連結は純粋に乗客への供食設備として存在するのに対し、ロシアは各車両の石炭暖房と同様、非常時を想定して連結されている感があります。つまり、極寒の地で列車に閉じ込められた時の為の非常設備として捉えられているフシがあります。
 ロシア人は中国人以上に乗車中の食料を十分に携えて乗車してくる為、食堂車の利用率は非常に悪いようです。シベリアを走る列車のメニューの貧弱さはよく言われることで、実際メニューに書いてあっても食べられない料理の方が多く、しかもご他聞に漏れず高い。それでも外国人観光客の利用が期待できる「ロシア号」や「バイカル号」だとそこそこの利用はあるようですが、運び屋の巣窟となっている第3/4列車や、一般ロシア人が利用する他の列車では、どれだけの人が食堂車を利用しているかは甚だ疑問です。
 が、私はここでも食堂車に通い続けました。この列車食堂の「ラソーリニク」というスープは絶品で、まさにロシア料理でした。

ボロボロの食堂車(番外編)

 中国車で編成される第3列車には、ロシアではおんぼろの食堂車がつながれていました。逆に別で見た北京~モスクワを走る第19列車はロシア車で編成されますが、この列車につながれた中国型食堂車もボロボロでした。偶然の一致でしょうか?

ページトップへ戻る